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データエンジニア(フェロー)
加藤 滉貴
Koki KATO

「AIはブラックボックスである」ということを耳にしたことがある人が多いかもしれません。確かに、AI(正確に言えば機械学習モデル)が予測したある答えの理由を求めて議論し、そこからインサイトを見つけるということが日々の業務の一つにあります。しかし不思議なことに私はAIを作る、又は使う際に、四則演算のような単純な命令を続けているだけであって、決して得体の知れないコードは書いるわけではありません。では、なぜAIが予測する過程を人間が把握できないのでしょうか。その理由の一つに「創発」があると私は考えます。

創発とは、集団の構成要素は単純な動作しかしなくても、それらが集積し組織化することで個々の構成要素の単純な足し合わせよりも、高度な現象が集団において発現することを指します。例えばアリの集団を見てください。アリの個体そのものは、複雑なことなど考えずに本能に従って行動しています。しかしその集合であるアリの集団は、協力して餌を運び、コロニー内に幼虫を育てる部屋や農園の部屋を作るなど非常に複雑なことを成し遂げています。私達人間の身体も同じです。単純な細胞が集まって臓器を形成し、電気信号が流れて思考が生れます。

コンピュータも電気信号そしてバイナリの集合体ですが、優れたエンジニアならその全容を理解することができます。しかし、同じくバイナリの集合体で書かれたAIの動作は優れたエンジニアであっても完全には理解できません。なぜならそこに創発が起こっているからです。これがこの分野の面白い所です。

現在私は、大学では知能の創発・進化をテーマとした研究をしており、そして当社で創発の力を借りたAIに携わる業務をしています。このように色々な場所で自分の知識が有機的に結びつくと感動があります。日々のデータサイエンスの中で、自分の知見を生かし、また得られた知見から学び、そしてそれらが結びつき、創発が起こることを期待しております。

(2019/6)


『Numb3rs』という海外テレビドラマをご存知でしょうか。主人公の天才数学者が数学を駆使してデータから犯罪を分析する姿は、ロマンに溢れています。高校生のときに見たこのドラマが数理工学への興味を掻き立てるきっかけとなりました。その後、実社会でのサイエンス応用の可能性に期待して工学部に進学しました。現在、ハードからソフトまで幅広く勉強中の身ですが、特にデータサイエンスに強い関心があり、そうした時に金融界に新風を吹き込もうとしているルートエフ・データム社から声がかかりました。データサイエンスとその対象領域である金融の両方のプロフェッショナルが協力しあう姿は、とても魅力的でした。

ここ数年、ビッグデータ・クラウド・AIと次々とデータサイエンスの革新の波が来ています。なかでもIT界のパラダイムシフトを起こすには、爆発的成功を収めたiPhoneのようにハードとソフトの技術革新を統合する必要があると考えています。近年、囲碁や将棋ソフトで有名になったDeep Learningですが、基本理論はすでに1960年台からありました。再び注目されているのはハードの進化によって処理速度が飛躍的に伸びたためです。ハード開発のハードルは高いものの、それがもたらすデータサイエンスの可能性を証明しました。

そしてデータサイエンスに欠かせないのが、何と言っても対象領域への理解です。理解なくして正確な分析はありえません。このように私はソフト・ハード・対象領域の理解を統合したデータサイエンスの進化を目指してまいります。

(2018/6)


東京大学 工学部電子情報工学科4年