ルートエフ・データムの岩間です。今年の締めのブログをと会社から指名を受けましたので、年末にちなんで最近思うことをダラダラと書いていきたいと思います。
年末には様々な恒例行事がありますが、その中で息の長いイベントに「今年の漢字」「新語・流行語大賞」など、言葉を使って今年1年を振り返るものが挙げられます。
それにならって、私のこの1年の流行語ではないですが、最近もっとも響いた言葉を紹介し、自分の仕事の振り返りをしていきたいと思います。
その言葉は「ミッション・パーパスは無意味である。」でした。この言葉は、経営学者のリチャード・P・ルメルトの最新の著作である「戦略の要諦」の表紙に記載されているものですが、これが刺さった理由としては、私も過去に「組織のミッションやパーパスを策定しよう」というワークショップに参加したことがあるのですが、そこで覚えた違和感からでした。
ミッションやパーパスについてはいろいろな解釈がありますが、ミッションは「組織が社会に対して果たすべき使命」、パーパスは「社会における組織の存在意義」とすれば概ね皆様の認識と大きな外れはないかと思います。そんな社会に対しての使命や存在意義を、組織側の人間だけで、かつ数時間(もちろん複数回行われる場合もありますが、それでも壮大なテーマに対してものすごく短時間であることは間違いない)のワークショップで決めてしまってよいのであろうか?という、疑問というより、社会の構成員不在で組織側の人間だけで存在価値を決めてしまうことに対するおこがましさを感じたものでした。
そういったことを思った経験と、ミッション・パーパスという高邁な言葉に対して軽々しく物申しづらいという空気を個人的に感じていたことから、「ミッション・パーパスは無意味である。」という言葉が私には大きく刺さったのであろうと思います。
「戦略の要諦」の書籍の内容も、私がもっていた違和感の正体を気持ちよく明文化してくれるものでした。この本では戦略立案において最初にすべきこととして「最初にすべきは困難な問題をじっくり見つめ、その構成要素やそこに作用している要因を理解することだ」という記載があります。ここから上記のワークショップに欠けていたものは「社会の困難な問題をじっくり見つめ、その構成要素やそこに作用している要因の理解」であったのだと合点しました。
ちなみに、上記のワークショップでも、3CやSWOTなどのフレームワークを使って環境分析してみようという時間は存在していました。ただ「フレームワークを埋める」ことと「じっくり見つめ、要素・要因を理解する」ことは全く違います。ワークショップでは前者のみを行って「環境を理解した体」を作って次に進むことが目的であり、「じっくり見つめ、要素・要因を理解する」ことはできていなかったと記憶しています。
やはり「じっくり見つめ、要素・要因を理解する」ことができないと、自分たちが何をすべきかは考えられないし、答えられないと改めて思ったものでした。(ただ、同著を通じて、ミッション・パーパスは問題解決の起点になりづらいというだけで、全く無意味ではないという考えにも至りました。例えば組織のメンバーに対し、奨励する行動や考え方を示す役割など。ただその場合は、社会への使命・存在意義というよりも、行動指針(同著での言葉を借りると「モットー」)とした方が腑に落ちたのではないかと思いました。)
その一方で「じっくり見つめ、要素・要因を理解する」の必要性の観点から、私のようなデータストラテジスト・データサイエンティストの業務を振り返ると、なまじ専門性を持っている、あるいは周りから専門性の発揮を期待されている、という環境から、「じっくり見つめ、要素・要因を理解する」ことをしなくても、「すべきこと”のようなもの”」は作れてしまう状況にあるのではないかとの思いも生まれました。たとえば「今持っているソリューションの中で、最先端のものを提供すれば満足するだろう」とか「自分たちはデータの専門家だからビジネス環境を整理して問題設定するのは別の人の仕事だ」といった過度なスキル・ドリブンの思考といえばよいでしょうか。
もちろんクライアントの状況に向き合ったうえで、それにフィットすると確信し最新・最先端のソリューションを提供することは一番望ましいことですが、クライアントの状況に向き合うプロセスを省略した場合、データを分析した側は満足しても、受け取った側の課題に真に寄り添った内容ではないことが多く、受け取った側は何をすればよいのかわからないという状況となってしまいがちであるということは過去の業務から感じてきました。
やはりデータ人材こそ「じっくり見つめ、要素・要因を理解する」が必要でしょう。ただ、データストラテジスト・データサイエンティストという立場は「じっくり見つめ、要素・要因を理解する」ことをしなければという圧力が働きにくい環境であることに改めて気づきました。ということは私も気を抜けば「じっくり見つめ、要素・要因を理解する」を怠ってしまう可能性があるということです。
ではどうすればよいか?私が当社に入社して約3ヶ月たちましたが、そこでの仕事を通じて出会った方々は不透明で複雑かつ制約が多いビジネス環境の中でどう次の一手を打とうかを必死になって考えて実行しており、尊敬の念を持てる方々ばかりであったと感じています。その方々の言葉にこれまで以上に耳を傾けて「自分ごと化」することで、「じっくり見つめ、要素・要因を理解する」ことを怠らないようにしていくことが、私が来年以降、クライアントの皆様の問題解決に向けてできることではないかと気づきました。
これを来年の抱負とすることと、まだ入社して日は浅いですが、今年出会った方に心からの感謝を申し上げることをもって、文章の締めといたします。
当社の本年の営業は29日までとなり、新年は4日より営業開始いたします。
今年一年のご愛顧に心より感謝申し上げますとともに、来年も変わらぬお引き立てのほど、よろしくお願い申し上げます。